腰痛改善で注目を浴びる「ピラティス」とは?その効果と具体的ケアを専門家が解説
ピラティスは、体幹コアのインナーマッスルを鍛えるエクササイズの一種で、リハビリテーションや健康維持のために広く活用されています。近年では、腰痛の改善に対する効果が注目されており、多くの人々がそのメリットを実感しています。この記事では、ピラティスが腰痛にどのように効果的なのか、具体的なメカニズムやトレーニング方法について詳しく解説します。
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Pilates Studio DEP 和歌山店代表。和歌山県内の病院や老人保険施設、訪問看護で勤務。 医療介護両面から高齢者、難病疾患を中心に地域医療に従事した後、PHI Pilates Comprehensive Instructorとなり大人気店のDEP和歌山店を運営し地域貢献に従事している。
Index
ピラティスとは?
ピラティスとは、20世紀初頭にジョセフ・ヒューベルト・ピラティス氏(男性)によって考案されたエクササイズで、主に体幹コアのインナーマッスルを強化し、正しい身体の使い方を学ぶことで、姿勢の改善やパフォーマンスアップを図れるメソッドです。
ピラティスは、特にリハビリテーションや慢性的な痛みの改善、スポーツのパフォーマンス向上に効果的とされており、正しい方法で行うことで、自身の動かせる範囲の中で安全に行うことができるため、老若男女問わず、幅広い世代に支持されているメソッドです。
腰痛改善に有用なピラティス手技は?
ピラティスは、主にマット上で行うマットピラティスと、マシンを使用するマシンピラティスの2種類に大別されます。両者の詳細については「体幹を鍛えて姿勢改善!マシンピラティスの魅力と効果を徹底解説」で解説していますが、簡単には以下の通りです。
マットピラティス
マットピラティスは自重をコントロールしながら行わなければならないため、初心者には難しい反面、場所を選ばすどこでも行えるメリットがあります。
マシンピラティス
マシンピラティスはバネなどによる負荷調整と運動方向の誘導などがある特性上、適切な動きを獲得していない初心者でも、マットピラティスよりも正確に、効果的にエクササイズを行えるメリットがあります。
マットピラティスとマシンピラティスのどちらが腰痛改善に有用か?
結論は、腰痛がある方はマットピラティスよりもマシンピラティスを行う方が安全で効果的です。
理由は、過去の研究論文の報告にて、腰痛患者は健常者と比較して腰椎を安定させるインナーマッスルの弱化があり、腰背部のアウターマッスルの過剰緊張がある状態となっていることや、過去の日常生活動作や運動などで腰痛を感じた経験がより腰痛を増強する要因になっていることが既に明らかになっており、普通に健常者と同様の方法でエクササイズを行っても、補助や運動方向の規定・誘導がないと容易に腰痛を誘発・増強させる可能性が高いからです。エクササイズ中に疼痛が発生すれば全身の緊張が上がって適切にインナーマッスルの刺激ができないだけではなく、動きのエラーが多くなって怪我を引き起こす確率が高くなります。
なお、マシンピラティスで一番人気のリフォーマーというマシンは、それが一台あるだけでも800種類以上のエクササイズが実施可能です。これは、単純なエクササイズの修正と応用の型の話であり、テンポやリズムの調整、プロップス(小道具)や別マシンとの併用コンビネーションなどを使うと無数にエクササイズが実施可能であり、パーソナルレッスンであれば個々のクライアントに応じたオーダーメイドの内容が実施できます。
各マシン詳細については、「マシンピラティスの全て!特徴と効果を徹底解説!」をご覧ください。マシンによってできることは変わるため、ピラティススタジオを選ぶ際の参考になります。スタジオ選びのポイントも以下の記事でご紹介しているので併せてご覧ください。
関連記事▶︎【最新版】マシンピラティス料金相場と人気スタジオおすすめランキング
腰痛とは?
腰痛診療ガイドライン(腰痛に関する研究を精査したもの)によると、腰痛は「体幹後面に存在し、第12肋骨と臀溝下端の間にある、少なくとも1日以上継続する痛み、片側、または両側の下肢に放散する痛みを伴う場合も、伴わない場合もある」と定義されています。
言葉では少し難しい感じがすると思うので、上記の写真をご覧ください。ざっくり説明すると、この赤線の範囲で1日以上継続する痛みのことを腰痛と呼んでいます。
腰痛の分類
腰痛は多くの人が経験する問題であり、腰痛診療ガイドラインやシステマティックレビュー(個々の研究結果を調べて統合した信頼性の高い研究)によると、腰痛は大きく「急性腰痛」「亜急性腰痛」「慢性腰痛」の3つに分類されます。それぞれの分類に応じて、原因や治療方針が異なります。
急性腰痛 (Acute Low Back Pain)
発症から4週間以内の腰痛
特徴:急性腰痛は非特異的(原因不明なもの)で、筋肉や靭帯の軽い損傷、姿勢の悪さ、過度の使用などが原因とされます。
亜急性腰痛 (Subacute Low Back Pain)
4〜12週間続く腰痛
特徴:急性腰痛が改善しない場合、亜急性腰痛に移行します。ここでも非特異的な原因が多く、身体的要因や精神的ストレスが絡むことがあります。
慢性腰痛 (Chronic Low Back Pain)
12週間(3ヶ月)以上続く腰痛。
特徴:慢性腰痛は身体的な要因だけでなく、心理社会的要因(例えば、うつや不安、仕事に関連するストレス)が強く関わることがあります。システマティックレビューによると、腰痛の約10〜20%が慢性化するとされています。
腰痛の原因
腰痛は主に「非特異的腰痛」と「特異的腰痛」の2つに分類されます。
非特異的腰痛
原因が特定できない腰痛で、約85%がこれに該当します。ガイドラインでは、この場合も重篤な病気を除外したうえで、保存的治療を優先することが推奨されています。
特異的腰痛
原因が明確な腰痛で、全体の約15%に該当します。椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、強直性脊椎炎、骨折、腫瘍、感染症などが原因となります。この場合、医療機関での専門的な治療が必要です。
実は原因がわからないことはむしろ少ない
非特異的腰痛と特異的腰痛の割合を見ると、「腰痛のほとんどが原因がわからない」と思ってしまいがちになります。しかし、この元となる報告は、かなり昔に報告されたデータ(腰痛診療ガイドライン2012で掲載された欧米の学会誌で発表された論文が元)であり、その後に発行された腰痛診療ガイドラインの改訂版では、「腰痛の75%以上が診断可能」と公表されました。
このようなミスマッチが起こった原因としては、以下の3つが考察されます。
①以前の論文報告データは整形外科のプロフェッション医師が診断したものではなく総合診療医が診断したものであること
②医学の進歩により画像診断精度が上がったこと
③再研究では整形外科に精通した医師が丁寧に診断を行ったこと
つまり、整形外科に精通している専門医のところで腰痛の診断を行えば、ほとんどの腰痛が何かしらの原因がわかり診断名もつくということになります。
当店の代表TakeはピラティススタジオDEPを立ち上げる前は、元々整形外科専門機関で腰痛ドックのリハビリテーション科リーダーをしていました。その際にも、腰痛を訴えて病院に来られた患者さんの精密検査データを管理していましたが、最新の腰痛診断データと同様の結果が出ていたことを確認しています。
まずは腰痛の原因を知ることがとても重要
前述の特異的腰痛にも色々な種類がありましたが、「腰が痛い…」と思っても、その原因は人によってさまざまです。
だからこそ、まずは腰痛の原因を明らかにすることがとても重要です。
腰痛があれば第一選択肢は病院受診
ピラティススタジオDEPにお越しくださるお客さんの中には、当店に来られるまでは「整体に通っていて、整体の先生に〇〇(診断名)の可能性がありますと指摘されたから、腰痛がひどい時は整体やマッサージで治しにいってもらっていた」というような対処をずっとされていた方が非常にたくさん来られますが、腰痛がある場合は整体やマッサージに行くのではなく、まず“病院受診”での診察をお勧めしています。主な理由は以下の3つです。
1)どんなに優秀な医師でもレントゲンやMRIなどの機器や局所注射などを行って、あらゆる病気の除外、確定診断を行うので、そのようなことができない施設ではそもそも原因を断定できない(診断は医師にしか許されていない行為であってその他の職種はそのような権限もない)。
2)レッドフラッグと言われる所見のある腰痛は緊急性を要するため医療機関の受診が必須。
3)筋肉のアンバランスの問題によって、適切な動作ができていないために痛みが生じている状況であれば改善できると判断できるが、まずは骨関節、靭帯、結合組織、神経などの基本的構造物に不可逆的な(治らない)変形や変性がないことがわかった方がその後の経過予測が正確にできる。
4)構造物に変形がある場合、最低でもどんな病名でどこがどのように損傷しているかを知れることにより、それ以上悪化させない日常生活上の動作指導が専門家なら可能。どの程度までの運動を行ってもいいのか、どんな運動はダメなのかまで明確に医師に聞くことができればさらに良い。
これらを怠って腰痛改善のためのピラティスを行ったとしても、症状が悪化してしまう危険性が高く、根本的に問題となっている部分がどうなっているのかわからなければどこまで改善できるかわからない状況でピラティスを行わなければならなくなります。
腰痛の原因はわかってもわからなくてもピラティスをする上では有益な情報
腰痛は、原因のわからない非特異的腰痛が多いと前述しましたが、近年の研究では、整形外科医が腰痛の診断をきちんと行った場合はほとんどの腰痛で原因がわかる(過去の報告とはむしろ逆の割合で診断名がつく)というデータが出ているので、しっかりとみてもらえば概ね原因が判明することは多いです。
また、「病院に行って、レントゲンも、MRIもして、局所注射や神経検査までしてみたのに、最終的にどの病気か診断名もつかず、結局何も見つからなかった形になった」というのは悪い事ではなく、それらの調べたものには“現段階では問題がなかった”ということを示すとても大事な情報です。それらに問題がないのであれば、筋肉のアンバランスや重心位置の問題、動作方法などのピラティスで大いに改善が期待できるものであるということが明確なので、病院の精密検査で問題がなければピラティスでよくなる可能性が高い腰痛である可能性は高いと言えます。
では、次に、ピラティスがどのように腰痛予防に繋がるのか?インナーマッスルを鍛えたら良いと聞くけどインナーマッスルって何?といった疑問から、日常生活での注意点、おすすめのピラティスエクササイズについてもご紹介していきます。
腰痛にはインナーマッスルが大事?それってなに?
インナーマッスルとは、身体の深層に位置する筋肉群のことで、主に体幹部の脊柱や骨盤、胸郭を支える土台のような役割を果たしている筋肉のことです。代表的なインナーマッスルは、腰椎の安定と腹圧を保つ腹横筋、多裂筋、骨盤底筋、横隔膜の4つであるため、これらについてそれぞれ役割を解説します。
言葉だけだと分かりにくいので上に掲載している写真を見ながら以降の内容をご覧んください。
※以下の文章中に()で英語表記している部分は研究報告の引用論文です。専門家でより詳しく知りたい方はそちらの論文も参考にしてください。
腹横筋
腹横筋は、腹部の最も深層に位置する筋肉で、コルセットのようにお腹の前から腰の後ろの方まで覆っており、脊椎や骨盤を安定させる働き、呼吸を補助してくれる働きを持っています。体幹の安定性に関しての研究でも、腹横筋が脊柱の過剰な動きを抑え、姿勢を保つ上で非常に重要な役割があることがわかっています。
また、多くの慢性腰痛を抱える方を対象にした研究でも、腹横筋の機能が低下していることがわかっています。(Hodges, P. W., & Richardson, C. A. 1996/Shamsi, M. B., et al. 2019)
多裂筋
多裂筋は、脊椎の後方に沿って走行する筋肉で、姿勢を保つために脊柱の細かい動きを制御しています。腹横筋と同様に、脊柱の過剰な動きを抑え、正しい姿勢を保つサポートをしてくれています。研究では、腹横筋と同時に活動することがわかっており、これらの働くタイミングのズレや、使いにくい状態、衰えていたりすることで、体幹が安定せず、腰痛を引き起こす要因となっていることもあります。(Kavcic, N., et al. 2004)
骨盤底筋群
骨盤底筋群は、内臓をハンモックのように下から支えてくれており、骨盤内臓器のサポート、排尿・排便のコントロール、性機能の向上、体幹の安定性、そして産後の回復において重要な役割を果たしています。また、骨盤底筋群と腹横筋の協調的な収縮が、体幹の安定性に関与していることがわかっており、この協調がうまく機能しないと、腰痛のリスクが高まる可能性があります。(Sapsford et al. 2001)
横隔膜
肋骨の下部にドーム上に蓋をするようについており、呼吸や体幹の安定性、消化器系のサポートや、自律神経系とも密接に関係しています。
横隔膜の機能が低下することで、姿勢を保持する筋肉が過剰に呼吸を補助しなくてはならなくなった結果、肩こりや姿勢の崩れが起こってしまうことがあります。(Kolar et al. 2010 )また、横隔膜は、腹横筋や多裂筋、骨盤底筋群と連動して体幹の安定性をサポートします。横隔膜が収縮することで、腹腔内圧が高まり、これが脊椎を安定させる役割を果たします。このメカニズムにより、姿勢の維持や体幹の安定性が保たれ、腰痛を予防できる可能性があります。(Hodges et al. (2001))
これら4つのインナーマッスルの機能はお互い相互的に関与しているため、呼吸が浅いということは、インナーマッスルも働きが低下してしまっている可能性が非常に高いと言い換えることも出来ます。
適切に呼吸を行えるようになるだけでも、インナーマッスルの活性化を図ることができ、過剰に緊張している脳の異常興奮も落ち着かせることができるので、腰痛改善にとってはとても重要な基本中の基本です。
呼吸については「【専門家監修】ピラティスの呼吸全て!写真付きで簡単な呼吸のエクササイズまで徹底解説」の記事で詳細に解説しており、ご紹介しているエクササイズは腰痛にも効果的な応用エクササイズとなっています。
腰痛改善・予防になぜピラティスが良いのか?
腰痛の改善・予防になぜピラティスが良いのか?それは、前述したインナーマッスルをピラティスが効果的に強化できるエクササイズであり、その他にも様々な良い効果があるからです。
体幹(コア)を強化できるから
上記のインナーマッスルの説明で提示した研究の中でも、慢性腰痛患者はインナーマッスルの働きが低下していたため、その機能を向上させるトレーニングを行うと腰痛が軽減するという知見はどの報告でも共通しており、これは強い根拠があるものとされています。海外のさまざまな研究報告でも、腰痛に対してのピラティスの効果が証明されてきています。
腰痛診療ガイドラインにもピラティスは専門家の推奨するレベルのエビデンスで掲載されていますが、これはピラティスだけの話ではなく、ヨガもそのようなメソッドとして紹介されています。
ただし、ヨガとピラティスは全く別物であるため、腰痛の重症度、疼痛発生要因によって同じように考えて使うと危険です。両者の違いについては、以下でインストラクターも勉強になる程の内容をまとめていますので、ぜひ読んでみてください。
▶︎ピラティス vs ヨガはどっちが効果的?違いを専門家が徹底解説!
柔軟性が向上するから
ストレッチをすると腰痛が軽減された(主に股関節と腰部)という研究があります。
身体が硬い方は、関節に動く範囲が制限されてしまいますが、股関節が硬くなると動作中に股関節が動かない分はすべて腰部が動かないといけなくなるため、腰部へのストレスが高まってしまう傾向になるのは必然と考えられます。
ピラティスでは、腰痛が出ないように腰部を安定させた状態で、自身がコントロールできる範囲の安全な動かし具合で可動域を上げて動いていくので、身体に負担が少なく、安全に柔軟性を高めることができます。なお、ピラティスのストレッチは、単純な静的ストレッチではなく、主に使う筋肉の反対側がエクササイズ中に伸びることによる動的ストレッチです。筋肉を使いながら同時にストレッチをかけながら動作を行うことで、筋肉と神経のバランスが整い、適切な動作方法を学習して戻りの少ない身体を維持することに役立ちます。
正しい姿勢や身体の使い方がわかるから
ピラティスでは、単純に筋力を強化したりストレッチするだけなく、エクササイズを行う中で全身の筋肉を使って正しい身体の使い方を学習できるトレーニングという特徴があります。
慢性的な腰痛がある方は、常に同じ姿勢や痛みが出やすい同じ動き方をしており、結果として腰部への負担が高くなってしまうという特徴があります。そのため、何回マッサージに行っても、整体に通い続けても、“根本的に自らの悪い運動パターンを獲得していないから何度も腰痛が再発する”という現象が起きます。
ピラティスはこの問題点を解決できるトレーニングであり、正しい姿勢や身体の使い方を学ぶことで、腰への負担がかからない姿勢や動きを獲得できるようになります。
猫背や反り腰になると、図の①や②の方向へ身体が傾き、背骨の理想的なカーブが崩れることで腰部への負担が増えてしまいます。
腰痛改善の効果が多くの研究で証明されているから
最新の研究では、慢性腰痛の改善は運動療法全般的に効果があるとわかっていますが、特に体幹コアのインナーマッスル強化を中心とした運動療法かつ、ストレッチや有酸素運動を組み合わせることでより効果が高まるということが、非常に強い根拠で示しされています。(Gordon, R., Bloxham, S., “A systematic review of the effects of exercise and physical activity on non-specific chronic low back pain,” Healthcare, 2016.)
ピラティスはインナーマッスル強化やストレッチ効果、有酸素運動の全ての要素が詰まっており、腰痛改善に効果があるという結果も数多く報告されています。
なお、ピラティスの効果は多岐に渡り、その他に嬉しい効果がたくさんあります。本記事同様に専門的な視点からまとめていますので、ぜひご覧ください。
▶︎体幹を鍛えて姿勢改善!マシンピラティスの魅力と効果を徹底解説!
▶︎週一ピラティスでも効果あり?初心者でも無理なく続けられる秘訣
日常生活上の注意
姿勢に気をつける
通常の座っている姿勢で腰部にかかる負担を100とした時、腰へのストレス(椎間板圧)は以下の図のように変化します。
いくら良い姿勢で座っていたとしても、立っている時よりも腰への負担は大きくなります。また、4時間以上の座りっぱなしの姿勢や、8時間以上の立ち仕事は腰痛(特に腰椎椎間板ヘルニア)のリスクが上がることがわかっています。
また、上記の良い姿勢で立っている時の負担を100とした時の正しい持ち上げ方では、腰の負担は170%となりますが、前屈みで腰の丸くなった姿勢では275%もの負担がかかるため、正しい動かし方を覚えることはとても重要になります。
重いものを持ち上げる時の姿勢や、腰に不安感のある方は前屈みの姿勢でも動かし方に注意が必要です。重いものを持ち上げる際には、できるだけ股関節を曲げて腰が丸まらないように腰を落とし、背筋を伸ばしてお尻の筋肉や腿裏の筋肉を使って持ち上げることが大事です。
以上のことから、腰痛予防はできるだけ負担の大きい前かがみ姿勢や長時間の同一座位を避け、1時間に1度は姿勢を変えることが重要となります。
ストレスのない生活や発散の方法を身につける
過剰なストレスは交感神経のスイッチをオンにしてしまうことで脳の過緊張を引き起こし、疼痛過敏性が上がったり、呼吸が浅くなることで胸郭の動きが硬くなり、猫背の姿勢になりやすいです。
猫背は脊柱や肋骨、肩甲骨などの上半身部分が硬く動かなくなってしまう状態ですが、この部分が動かないと、前述の股関節が硬い時と同じように猫背で上半身が動かない分だけ動作の際に腰部が代償的に動かないといけなくなり、腰部ストレスが増加します。
結果として、ストレスをきっかけに様々な不調が起こるため、自身でストレスを発散する方法を身につけること、ストレスが溜まりにくい環境に調整することも非常に重要です。
なお、ストレスが溜まった脳の緊張は、呼吸エクササイズである程度調整ができます。「ピラティスの呼吸全て!畳1畳分で誰でも簡単にケアできる方法を写真付きで徹底解説!」の内容をご覧ください。
腰痛を軽減できる可能性のある寝具とは?
マットレスの硬さにも着目してみましょう。
硬すぎるマットレスは、身体が十分に沈み込まず、先ほどの腰部にかかる負担を立っているときに100とした場合、15%〜25%の負担が腰部にかかります。柔らかすぎるマットの場合でも、沈みすぎることで適切な背骨のカーブが崩れてしまい、20〜30%の負担が腰部にかかります。最近の体圧分散のマットレスの場合、適切な背骨のカーブが保たれる、腰部への負担は10〜20%軽減するものもあります。
枕の高さに関しても、頚部の適切なカーブが保たれることが重要なため、一般的には仰向けでは5から10cm、横向きでは肩幅があるため、さらに高さが必要になるため、自分が普段どの寝方で寝やすいかも考慮する必要があります。
また、就寝時の姿勢に関しては、横向きで赤ちゃんが丸くなったような姿勢や、シムス体位と言われる姿勢が腰部に対して総合的に最も負担が少なくなりやすい姿勢です。
腰痛改善・予防のためのおすすめピラティスエクササイズ
腰痛が身体を丸める動きで痛いのか、反る動きで痛いのか、捻った時に痛いのか、原因はさまざまです。しかし、どのような場合であっても、腰痛を改善するためには、体幹コアのインナーマッスルが入って正常の適切な脊柱・骨盤の位置で安定化させらるニュートラルポジションという姿勢をとることがまず大前提になります。
今回は、ニュートラルポジションを取った状態で行うエクササイズを2つご紹介します。なお、このポジションがうまく取れない方は、前述した呼吸エクササイズ呼吸エクササイズを準備運動として行い、インナーマッスルを活性化したり全身をほぐしてから行ってください。
骨の位置の確認
まずエクササイズを始める前に骨盤と肋骨の位置を確認しておくと、この後に行うエクササイズ効果が高まるので、その位置を確認していきます。
以下の写真の肋骨の一番下の出っ張っている部分を肋骨角と言います。
骨盤ところにある三角形の両端をASIS、三角形の真ん中の頂点が恥骨といい、この3つの点を結ぶ三角形を前方トライアングルと言います。前方トライアングルは骨盤のイメージを持ってもらうとわかりやすいです。
ニュートラルポジションの姿勢を作る
①まずは肋骨角の位置を確認していきます。以下の写真のように脇腹の辺りに手をおくと、出っ張りがあり、この部分が肋骨角です。
②次に、前方トライアングルを確認します。まずは腰骨の前側辺り(骨盤の前側)に両掌を当ててると、グリグリ出っ張っている骨(ASIS)があります。両掌の母指球辺りをASISに手を当てたらそのままの状態で両手の親指を向かい合わせます。さらに、そのまま両手の人差し指を恥骨の方に向かって伸ばすと、前方トライアングルの三角形の完成です。
③ ①と②で肋骨と骨盤の位置関係がわかったら、最後に体幹部の正常の位置関係を作って、体幹部のニュートラルポジションが完成です。②で作った前方トライアングルは、三角形が自分の顔の方を向いていたら丸腰で床と腰との間の空間が全くない状態です。逆に、三角形が足先の壁側の方を向いていて床から手一枚以上の隙間が入る状態だと反り腰です。前方トライアングルの面が天井と平行になっていて床と腰との隙間が手一枚入るぐらいのスペースが空いていれば骨盤・腰椎は適切で正常な位置になります。
よって、前方トライアングルを天井と平行に保ったまま(腰と床の隙間を潰さないよう状態を維持したまま)、両手を肋骨に手を当てて、息を口からハーっと吐くように肋骨を床の方に向かって引き下げるように締めて前方トライアングルの面と一直線になるように呼吸をします。
最終的には、以下の写真のように、お腹が平らになった状態になり、横から見たら耳−肩−股関節が一直線になり体幹のニュートラルポジションが完成です。
腰痛改善・予防エクササイズ1:テーブルトップ・シングルレッグダウン
上記のニュートラルポジションを常に維持した状態で、片脚ずつ丁寧に上げ、両脚を浮かしたテーブルトップポジションを作ります。体幹部を安定させた状態で、足先をリラックスして膝の角度を90°で変えないように注意深く股関節の付け根から動かす意識でこの動作を繰り返します。
【注意点】
脚を上げる瞬間に骨盤の前方トライアングルが脚先の床の方を向いてしまって反り腰になると腰部のストレスが増加します。前方トライアングルは常に天井と平行を意識しましょう。難しい場合は、上半身を起こして脚の形が崩れてないか、お腹が平らに維持できているかを目で確認しながら行うと良いです。頭を上げることによって、腹部の緊張は保たれ、エクササイズが適切に行いやすくなります。
このエクササイズは、無理に回数を行う必要はなく、ご自身のレベルに合わせて痛みのない範囲で、ニュートラルポジションを正確に保ったまま行うことが非常に重要になります。脚を下ろすたびにニュートラルポジションをきちんと取り直しましょう。
腰痛改善・予防エクササイズ2:スイミング修正
①肩の下に手、股関節の下に膝がくるように、横から見た際に腕と大腿が床に対して垂直になるようにしましょう。
②足は指先を立てておき、足幅は拳1個分をキープします。
③脳天からお尻まで一本の棒が刺さっているイメージで四つ這いをとります。仰向けのテーブルトップと同じように前方トライアングルと肋骨角が平行な体幹のニュートラルポジションを取れれば理想的です。
④ニュートラルポジションをキープしたまま、まずは片足を伸ばしてみましょう。この時に、上げている側のお尻に力が入る感覚があると良いです。その状態でさらに脳天と足先を引っ張り合う感覚があるとさらにインナーマッスルが活性化されやすいです。
⑤足に入れ替えだけを交互に行い、慣れてきたら上げた足と逆側の手も上げてみましょう。
【注意点】
四つ這いのニュートラルポジションを取ることは、ピラティス中級者でも難しいスキルになります。スイミング修正のエクササイズは、手脚を上げる際に極端に下腹や肋骨が飛び出て反り腰にならなければ腰痛誘発のリスクは少ないので、動作中に体幹の安定に注意しましょう。
エクササイズ全般のコツ
インナーマッスルを活性化するためには、呼吸を止めずにリラックスした状態で体幹部を安定化させる意識が特に重要です。
最初は力んでしまう人が多いですが、力みすぎず、痛みが出ない範囲で安定させて、しっかりと呼吸をしながら横隔膜を使ってインナーマッスルを活性化すると上手くいくでしょう。
なお、本エクササイズは一般的な腰痛予防のための腰部を安定化させるインナーマッスルの活性化を行うための方法です。特定の疾患に対して万能に使えるものでもないので、腰痛の診断を受けている方は専門の医療機関の主治医の指示に従い運動を行ってください。くれぐれも、痛みを我慢しながら頑張って無理やり動くということはないようにしましょう。
まとめ
腰痛がある場合には、まずは腰痛の原因を明らかにするために医療機関を受診することを当店ではお勧めしております。
重大なリスクのある原因を除外した後に、姿勢の崩れや身体の使い方の問題が要因で起こっている腰痛に対しては、ピラティスで改善できる可能性も非常に高くおすすめできるからです。
なお、ピラティススタジオDEPでは、現在、初回体験キャンペーン中で破格の金額を実施しており、効果を体感できなかった場合は全額返金保証でレッスンをご提供しています。お近くの店舗にお気軽にご連絡ください。
※ありがたいことに沢山のご予約を頂いております。レッスン枠には限りがございますので、興味があればお早めにご予約ください。
Pilates Studio DEP 和歌山店代表。和歌山県内の病院や老人保険施設、訪問看護で勤務。 医療介護両面から高齢者、難病疾患を中心に地域医療に従事した後、PHI Pilates Comprehensive Instructorとなり大人気店のDEP和歌山店を運営し地域貢献に従事している。