ピラティス vs ヨガはどっちが効果的?違いを専門家が徹底解説!
健康や美容、フィットネスに興味がある方なら、一度は耳にしたことがある「ピラティス」と「ヨガ」。どちらも身体と心の健康、スタイル改善に良いとされていますが、その違いを知っていますか?今回は、意外ときちんと理解していないと区別が難しいピラティスとヨガの違いについて具体的に解説します。
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Pilates Studio DEP 代表取締役社長。PHI Pilates Comprehensive Instructor、三学会合同呼吸療法認定士、栄養コンシェルジュ2つ星等の専門資格を保有。急性期総合病院や大学病院などで理学療法士として10年以上勤務後、2020年1月にPilates Studio DEPで独立開業。現在、フランチャイズ展開で全国30店舗以上の店舗を出店し、2023年 NEXT AWARDトレーナー・オブ・ザ・イヤーで全国の数多くのインストラクターの中からプログラムディレクター部門の最優秀賞も受賞。日本理学療法士協会の学会奨励賞等の実績もあり。
Index
ピラティスとヨガの【目的】の違い
ヨガとは
身体の健康促進とともに、精神的な安定やリラクゼーション、瞑想を通じた内面的な平和を追求します。
少しニュアンスが正確ではありませんが、ヨガを全く知らない方にわかりやすく説明すると、ヨガにはアーサナという色んなポーズがあり、仰向け→座位→立位と段々と活動筋が増えバランスが悪くなる状態下になっても、苦しい・きついと感じることなくアーサナを取れるような精神の平穏を保てるよう内面を鍛錬するようなメソッドです。
ただ、ヨガでは、苦しみなどとは反対の過剰興奮や過度に気分が高揚するようなことも良しとはなされません。つまり、バランスが取れたシーソーのように、穏やかに流れる川のような柔軟で平穏な精神を獲得することを良しするようなメソッドと考えられています。
※より厳密に言葉を選ぶと、“頑張って獲得する”というような表現もヨガの思想とはやや異なります。ヨガの本来の目的は解脱(モクシャ)であり、モクシャはインドの宗教や哲学における最高の目標で、輪廻の束縛から解放されて永遠の平安と幸福を得る状態であり、ヨガの実践や宗教的な修行を通じて、この開放状態に到達することを目指します。
以上より、現代フィットネスで“身体を良くするもの”としてみなさんがイメージしているヨガは、ヨガではない別の手技と言えます。また、厳密に考えるとヨガを“健康のための運動”と考えるのは少し違うと考え、そのように使おうとして怪我が沢山起こってしまったということも、過去にヨガインストラクター界隈では話題になっていました。
現在は、そのような経緯があり、解剖学や運動学を踏まえた新しい形のヨガも沢山増えてきたため、次に掲載するピラティスと違いがわかりにくくなる理由ですが、ヨガは“メンタルの平穏”と覚えておくとわかりやすいです。
ピラティス
主に体幹の強化、柔軟性の向上、姿勢改善、筋力とバランスの強化を目指します。
ピラティスは、元々戦傷者のリハビリテーションとして使われていた経緯があり、身体に対する負担が最も低く高いパフォーマンスを発揮して動くために必要な脊柱や骨盤帯から付着する筋肉、いわゆるインナーマッスルを安定させた状態から段階的にダイナミックな動きに移行する“全身を適切にコントロールするメソッド”です。
これを反復して行うことで、筋肉や脳に動きを学習させ、反射的にかつ持続して使えるようになるまで動きを覚えこませるモーターコントロール(運動学習)理論に準拠する身体強化トレーニングです。
ピラティスでは、インナーマッスルを賦活し、安全に運動を行うために呼吸も重要視されるため、後述するような良い精神的効果もあります。
しかし、根本的に内面の平穏を目的としたヨガと、身体を鍛えるためのピラティスという手技的な違いがあり、真髄は全く真反対のメソッドです。
ピラティスとヨガの【起源】の違い
ヨガ
ヨガは古代インドで何千年もかけて発展してきた修行法です。
特定の一人によって開発されたものではなく、その発展には多くの賢者や聖人が関与しており、パタンジャリ、スヴァミ・ヴィヴェーカーナンダ、ティルマライ・クリシュナマチャリアなどの人物が現代ヨガにとって重要な役割を果たしてきたと考えられています。
起源は紀元前2500年頃のインダス文明に遡るとも言われています。
ピラティス
20世紀初頭にドイツ人のジョセフ・ヒューベルト・ピラティスが開発。ピラティス氏は元々身体が弱く、あらゆるメソッドにチャレンジする中でピラティスを生み出しました。
そして、その過程でヨガの要素も取り入れていたため、ヨガとピラティスの動きは似ているエクササイズの形が多数あります。
なお、ピラティスもヨガと同様に後継者の方々がメソッドを受け継ぎ、発展させてきたことで今日のピラティスがあります。
特に重要な人物として、クララ・ピラティス、ロマーナ・クリザノウスカ、ジェイ・グルーヴァー、キャロン・ブレイロック、イヴ・ギャラック、キャシー・グラント、ロリータ・サン・ミゲルなどが挙げられ、この方達はピラティス氏と直接学んだ数少ない認定インストラクターの一人で、世界中でピラティスの教育活動を行ってきました。
ピラティスとヨガの【エクササイズスタイルと動き】の違い
ヨガ
スタイル
主にマットを使ったエクササイズですが、ブロックやストラップなどの道具を使うこともあります。
動き
さまざまなポーズ(アーサナ)を取り、呼吸法(プラナヤマ)や瞑想も含まれます。ゆっくりとした動きから、バランスを取ったり動きの多いスタイルまで多岐にわたります。
ピラティス
スタイル
マットを使ったエクササイズのイメージがある方が多いですが、キャデラックやリフォーマー、チェアなどの専用器具の補助誘導機能がある方法でエクササイズをまず初めに行い、自力でコントロールができるようになってきたら補助のないマットでいつでもどこでも行えるようトレーニングしていきます。
動き
精密でコントロールされた動きが特徴。特に腹筋や背筋などの体幹(コア)の筋肉を鍛え、脊柱のあらゆる動きを獲得し、それを四肢末端まで正確に流れるようにコントロールできることに重点が置かれています。
ピラティスとヨガの【呼吸法】の違い
ヨガ
多種多様な呼吸法があり、プラナヤマと呼ばれるテクニックを使って呼吸をコントロールします。
プラナヤマは、呼吸を通じて生命エネルギー(プラーナ)をコントロールすることを目的としており、これにより心身のリラックスや集中力を高める効果などがあります。
以下に、代表的なヨガの7つの呼吸法について簡単に掲載しておきますが、ヨガは色々な呼吸法があるので胸式と腹式いう分け方は難しいです。
1. ウジャイ呼吸 (Ujjayi Breathing)
方法:鼻からゆっくりと息を吸い、吐くときに喉の後ろで音を出すようにする。
効果:心を落ち着け、集中力を高め、内側から体を温める。
2. ナーディショーダナ (Nadi Shodhana) / 交互鼻孔呼吸
方法:片鼻孔ずつ交互に息を吸い吐きする。右手の親指で右鼻孔を塞ぎ、左鼻孔から吸い、薬指で左鼻孔を塞ぎ、右鼻孔から吐く。
効果:神経系をリラックスさせ、心のバランスを整え、集中力を向上させる。
3. カパラバティ (Kapalabhati) / 頭蓋光明呼吸法
方法:強く短い腹筋を使った吐息を連続して行う。吸うのは自然に行う。
効果:消化力を高め、肺を強化し、体内の毒素を浄化する。
4. バストリカ (Bhastrika) / 鍛冶屋のふいご呼吸
方法:激しく息を吸い、吐く。腹筋を使って強力に行う。
効果:エネルギーを増幅し、血行を促進し、体全体を活性化する。
5. シータリ (Sitali) / 冷却呼吸法
方法:舌をストローのように丸め、口から息を吸い、鼻からゆっくりと吐く。
効果:体を冷却し、リラックス効果をもたらし、体内の熱を取り除く。
6. ブラーマリ (Bhramari) / 蜜蜂の呼吸
方法:鼻からゆっくりと息を吸い、口を閉じたまま「ンンン」という蜂のような音を出しながら息を吐く。
効果:神経系を鎮め、ストレスや不安を軽減し、集中力を向上させる。
7. ウダーナヴァーユ (Udana Vayu) / 頭上の風
方法:深くゆっくりとした呼吸を行い、吐くときに頭頂部に意識を集中する。
効果:精神の明瞭さを促し、内面的な平和をもたらす。
ピラティス
動きと呼吸を連動させることが重要で、特に横隔膜呼吸(ディアフラグマティックブリージング)を強調します。
よく「ピラティスは胸式呼吸?ヨガは腹式呼吸?」などとご質問がありますが、横隔膜を使った呼吸は医学的に腹式呼吸と呼ばれており、ピラティスは横隔膜を使いながら胸郭全体にしっかりと空気が入るように呼吸を行うというピラティス氏の原則があるため、厳密に言えばどちらかに分類できるわけではありません。
また、ピラティスの呼吸は屈曲伸展理論という原則に基づき、背骨が伸展する(伸びる)際に息を吸い、背骨が屈曲する(丸まる)際に息を吐くというのが基本となります。ただし、エクササイズによっては呼吸を逆にした方が正しい動きを行いやすいものなどもあり、これはあくまで全般的な基本というだけの話です。
なお、ピラティスは鼻から息を吸い、口をハの字にして息を吐きます。前述のヨガとは異なる呼吸法であることがわかると思います。
ピラティスとヨガの【精神的側面】の違い
ヨガ
瞑想やマインドフルネスを重視し、精神的な成長や内面的な平和を目指します。全体的な心身の調和を大切にします。
ピラティス
精神的なリラクゼーションや瞑想は含まれないことが多いですが、同じように集中力を高めたり精神的なバランスを改善する効果はあります。
両者ともに、呼吸や運動に伴う人間の生理的・神経的な反応の影響が効果として反映している要素が大きいため、かなり類似していると言えます。
ただし、ヨガの思想をきちんと踏まえて精神と向き合うという行為は、脳機能の観点から前頭葉や情動系等に働きかける作用は大きく異なる機序であり、精神的の成長・人間力の向上、ストレス抵抗性の向上、疲弊しないメンタル強化等に寄与する効果はピラティスとは異なると考えられます。
まとめ
今回はピラティスとヨガの違いについて解説しました。
最後にポイントをまとめ、よくご質問がある「ピラティスとヨガのどちらがおすすめか?」という疑問にもお答えします。
ヨガ
ヨガは、心身の調和を重視し、ポーズ、呼吸法、瞑想を通じて内面的な平和を追求するという側面から、精神の平穏を保つ・均衡を保つメソッドといえる特徴があるため、ストレスを強く感じている方や精神的に安定を求めたい方にとって相性が良いでしょう。
ピラティス
ピラティスは、体幹を中心とした筋力強化や姿勢改善を目指すエクササイズです。専用のマシン使うメソッドが主体であり、精密に動きや身体パフォーマンスを改善することが特徴であり、身体を良くしたい方や身体の不調がある方に特におすすめです。
ピラティスとヨガのどちらがおすすめ?
どちらも目的は異なり、幅広いスタイルがあるので、どちらがおすすめかは受けるあなたのニーズ次第です。
現在はスタジオが沢山でき、資格発行団体もピンキリでインストラクターのレベルやレッスン内容はスタジオによって差が顕著ですが、少なくとも上記のような“インストラクター自身が使うメソッドの他との違いが明確にわかっているような人”に見てもらえば、初心者から上級者まで幅広く楽しむことができます。
あなたの目的や好みに応じて、ピラティスとヨガのどちらか、または両方を取り入れてみてはいかがでしょうか?
なお、ピラティススタジオDEPでは、理学療法士・作業療法士の資格を持ち、病院などの医療機関で一定期間の実務経験のある優秀なスタッフのみがピラティスインストラクターとして現場に立っています。
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※初回レッスンはどの店舗も体験しやすい破格となっておりますが、スタジオ利用者数には限りがありますので興味がある方はお早めにご予約をいただければ幸いです。
Pilates Studio DEP 代表取締役社長。PHI Pilates Comprehensive Instructor、三学会合同呼吸療法認定士、栄養コンシェルジュ2つ星等の専門資格を保有。急性期総合病院や大学病院などで理学療法士として10年以上勤務後、2020年1月にPilates Studio DEPで独立開業。現在、フランチャイズ展開で全国30店舗以上の店舗を出店し、2023年 NEXT AWARDトレーナー・オブ・ザ・イヤーで全国の数多くのインストラクターの中からプログラムディレクター部門の最優秀賞も受賞。日本理学療法士協会の学会奨励賞等の実績もあり。