ピラティス呼吸法の科学的根拠とその効果!避けたほうが良い呼吸とは?
ピラティスの呼吸法は意識的に正しく使うことで、筋肉のコントロールを高め、驚くほど身体機能を飛躍させる効果があるだけでなく、ストレス軽減や疲労回復、メンタルヘルスの向上にも期待できることをご存知ですか?今回は、ピラティスの基本である呼吸法にフォーカスし、これらの効果を科学的根拠を踏まえてまとめました。
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Pilates Studio DEP岡山店代表。脳卒中認定理学療法士/三学会合同呼吸療法認定士/理学療法士協会介護予防推進リーダーなど様々な資格を保有。岡山県内の超急性期病院で10年以上勤務し、脳神経・呼吸循環・整形外科など多くの疾患を経験。病気になる前の予防医療としてのピラティスに可能性を感じ、DEP岡山店をオープン。地域の方々の笑顔の未来を守り続けらえるようなサービスを日々提供している。
Index
ピラティスとは?
ピラティスは、ジョセフ・ヒューベルト・ピラティス氏(男性)が20世紀初頭に開発したエクササイズ方法です。
主に体幹のコアマッスルを中心とした筋肉を強化し、柔軟性を高め、正しい身体の使い方を学ぶことで、身体全体のバランスを整えるメソッドです。
各動作を行う際には呼吸と動作を連動させることが求められ、これがエクササイズの効果を高めます。
ピラティスの効果の詳細が知りたい方は、以下の記事もご参照ください。
▶︎【専門家監修】ピラティスの効果と体型変化!体が変わるメカニズム
▶︎腰痛改善で注目を浴びる「ピラティス」とは?その効果と具体的ケアを専門家が解説
呼吸で身体を整えるとは?
身体を整えるとは、筋肉や骨格の調整、内臓の機能、姿勢、血液循環やリンパの流れなど、身体全体の動きがスムーズで、心地よく感じられる状態を意味しています。日常生活や運動において「疲労や不調を感じにくく、心身ともにリラックスした状態が保たれている」ことを言います。
心身ともに、リラックスした状態を保つのに重要な生理機能が、自律神経系です。自律神経系は、意識的に制御できない身体機能を調整するもので、交感神経と副交感神経の2つが対照的にはたらきます。交感神経は、「闘争・逃走反応」、副交感神経は、「休息・リラックス」の反応を担っております。以下に両者の主な違いをまとめます。
呼吸は唯一、意識的にコントロールして自律神経系に影響を与えることのできるものです。
普段は無意識下で行われていますが、呼吸のペースや深さは意図的に調整でき、自律神経系をある程度調整できます。
例えば、忙しい時やストレスが溜まっている時にため息をつきますが、ため息も意図的な呼吸が習慣化したようなものです。ため息のように、息を深くもしくは長くゆっくり吐くと、副交感神経がはたらき、リラックスと体内の回復機能を高められます。温泉に入った瞬間に、ハ〜と息が漏れるのも同じことであり、体の力が抜けてリラックスできるのが容易に想像できるでしょう。
呼吸の観察方法
呼吸は、体内の二酸化炭素排出と細胞のエネルギー源となる酸素を送るため、一日に2万回以上も絶え間なく繰り返し行われています。
この呼吸が乱れていると、運動機能や認知機能は容易に低下し、疲れが溜まりやすくなったり、仕事の質が落ちたりするなど、あらゆる日常生活活動に負の影響を与えます。
よって、自身の呼吸の良し悪しを知り、良い状態に整えることはとても重要です。詳細な呼吸状態のチェック&改善方法はピラティスの呼吸全て!初心者〜ベテランの基本ガイドで徹底的に解説していますが、ここではざっくりとした呼吸様式の確認方法だけお教えします。
左右差の確認
仰向けになるか、座った状態でリラックスします。両方の肋骨に手を添え、呼吸を行いましょう。息を吸うときに肋骨が広がり、吐くときに元に戻る感覚を感じ取ります。その際、左右の動きに差がないかも確認しましょう。
片方の手を胸に、もう一方の手をお腹に置きます。息を吸ったときに胸が上がると「胸式呼吸」、お腹が上がると「腹式呼吸」といわれます。自分の呼吸がどちらに近いか、ゆっくり観察してみましょう。
胸式呼吸
この呼吸法は、主に肋間筋を使い、胸が大きく動くのが特徴です。息を吸うときには肋間筋が働き、肋骨が持ち上がって胸が広がり、空気が肺に入ります。息を吐くときには、肋間筋がゆるみ、胸が元に戻って空気が押し出されます。胸式呼吸は浅く、速いリズムになりやすい呼吸法であり、この状態の方は肩首周りの緊張が上がり不調が増えやすくなります。
腹式呼吸
横隔膜という筋肉を使って呼吸する方法のことです。 息を吸うときに、横隔膜が下がって胸の中の圧力が低くなり、空気が肺に入ってきます。このとき、横隔膜が下がることでお腹がふくらむのが特徴です。息を吐くときは横隔膜がゆるみ、広げられた肋骨の弾性力(戻ろうとする力)で無駄にその他の筋肉は使わなくても肺から空気が押し出されます。特徴として、ゆっくりとした呼吸ができるため、リラックス効果があります。仰向けの状態では、腹式呼吸が有意だと正常呼吸です。
ピラティス呼吸
息を吸うときには、胸を広げると同時に、横隔膜を使って行いますが、「腹式呼吸」のようにお腹は膨らませず、引き締めたまま行います。息を吐くときは、口をハの字にしながら息を吐き、広がった胸が真空状態になるように肺全体の空気を絞り出し、体幹の筋肉をさらに引き締めるようにします。
ピラティス呼吸法は「お腹がぽっこり出ないように横隔膜を使いながら、胸に空気を入れる呼吸」です。このピラティス呼吸法は、厳密に言えば「胸式呼吸」「腹式呼吸」のどちらかに分類されるわけではありません。
また、横隔膜は、お腹の他の筋肉ともつながりがあるため、呼吸を意識して行うだけで、インナーマッスルが活性化されて、エクササイズが行いやすくなり、姿勢が整う、不調が改善するなどの効果が得られます。
以下に「胸式呼吸」「腹式呼吸」「ピラティス呼吸」の特徴を、図でまとめています。
ヨガとピラティスの呼吸の違い
ヨガとピラティスの呼吸の違いに関しては、ピラティス vs ヨガはどっちが効果的?詳細な違いを専門家が徹底解説!で詳細に解説していますので併せてご覧ください。
科学的根拠からみたピラティス呼吸法がもたらすメリット
いくつかの研究から、ピラティスの呼吸法によるメリットを挙げます。
疲労回復・ストレス軽減
2011年の研究では、ピラティスエクササイズを行うことで、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が抑制されることが示されました【1】。呼吸法による深いリラクゼーションが、慢性的なストレスや疲労感を軽減します。
姿勢改善と体幹強化
正しい呼吸法とともに行われるピラティスは、姿勢の維持に関わる筋肉(特に腹横筋)を効率的に鍛えることができます。2014年の研究によると、ピラティスを取り入れたグループは、姿勢が著しく改善されたことが報告されています【2】。呼吸と動作の連携が、体幹の安定性をサポートします。
肺活量の向上
2020年の調査では、定期的にピラティスを実践することで、肺機能の改善が確認されました【3】。横隔膜呼吸を中心にしたピラティス呼吸法は、胸郭を広げて呼吸効率を上げるため、酸素摂取量が向上し、持久力の向上にもつながります。
不安感の軽減
ピラティスの呼吸法は、リラックス反応を引き起こし、不安や緊張感を和らげます。2018年の研究では、深い横隔膜呼吸を実践することで、短期間で不安感が大幅に軽減されることが確認されています【4】。特に、呼吸を意識して行うことで、現在に集中するマインドフルネス効果が得られ、精神的な安定感が向上します。
睡眠の質の向上
2021年の研究では、呼吸法を取り入れたピラティスを行うことで、睡眠の質が向上し、疲労感が大幅に軽減されることが報告されています【5】。特に、夜寝る前の呼吸法は、日常の緊張やストレスを解きほぐし、深い睡眠を促します。
避けたほうが良い呼吸法
ピラティスの効果を最大限に引き出すためには、誤った呼吸法を避けることも重要です。以下の呼吸法は、筋肉や姿勢に悪影響を与えることがあり、ピラティスでは推奨されません。
頻呼吸
通常、成人の安静時呼吸数は1分間に12〜20回です。呼吸数が増加し、1分間に25回以上になると、頻呼吸といわれます。過剰に速く呼吸を行うことで、交感神経優位となり、過剰な緊張状態となってしまったり、酸素と二酸化炭素のバランスが崩れ、めまいや疲労感を引き起こすことがあります。ピラティスでは、穏やかで安定した呼吸を目指すべきで、リズムや深さを崩す呼吸は避けましょう。
浅い呼吸
浅い胸式呼吸は、胸だけで呼吸をする方法で、肺の上部しか使わないため、酸素摂取量が少なくなります。この呼吸法は、肩や首に無駄な緊張を引き起こし、疲労感を助長します。また、体幹の筋肉を使わないため、ピラティスの本来の効果が得られません。
息を止める(バルサルバ法)
力を入れる際に息を止める「バルサルバ法」は、瞬間的に腹圧を高めることができますが、ピラティスでは推奨されていません。
バルサルバ法は血圧を急激に上昇させ、心血管系に負担をかける恐れがあります。また、インナーマッスルではなく、アウターマッスルが優位に働きやすくなるため、動作が不安定になることがあります。
避けるべき呼吸については、説明されるとすぐに理解できますが、レッスン中は動作に集中するあまり、無意識にそのような呼吸になってしまう方が本当に沢山おられます。正しい呼吸法と、それに合わせた動作をしっかり見てもらえるインストラクターがいると、エクササイズの効果をより実感しやすくなると思います。
なお、当店は全スタッフが理学療法士及び作業療法士の資格を保有しています。スタッフの中には、僕のように三学会合同呼吸療法認定士の資格を持つ呼吸に精通した専門家や、医療施設で働いていたのでこのような呼吸の知識は装備知識として有しているスタッフばかりなので、呼吸や動作が正しくできているか確認したい方は、ぜひお近くのピラティススタジオDEPへお越しください。
まとめ
ピラティスの呼吸法は、身体だけでなく心にも大きな恩恵をもたらします。
正しいピラティス呼吸法を習得し、日常生活の動作にも取り入れることで、ストレス軽減や疲労回復、メンタルヘルスの向上が期待できます。また、誤った呼吸法を避け、ピラティスのエクササイズを最大限に活用するために、呼吸に意識を向けましょう。疲れ知らずの身体を手に入れ、毎日をもっと快適に過ごしましょう。
なお、ピラティススタジオDEPでは、現在キャンペーン中で初回体験を破格の金額で実施しており、効果を体感できなかった場合は全額返金保証となっております。お近くの店舗にお気軽にご連絡ください。
※ありがたいことに沢山のご予約をいただいております。レッスン枠には限りがございますので、興味があればお早めにご予約ください。
参考文献
【1】Shirley Sahrmann, The Impact of Stress on the Musculoskeletal System: Physical and Behavioral Mechanisms (2011).
【2】Carly Anderson, Effectiveness of Pilates on Posture: A Controlled Study (2014).
【3】Roberto Martínez-Romero, Pulmonary Benefits of Pilates Training in Healthy Individuals (2020).
【4】de Souza Toledo, R. A., & Santana, R. (2018). “Effects of breathing techniques used in Pilates on anxiety levels and heart rate variability in healthy adults.”Complementary Therapies in Clinical Practice, 32, 1-6.
【5】Rodrigues, C. E., & Pereira, D. S. (2021). “The impact of Pilates training on quality of sleep, life, and physical fitness in middle-aged women: A randomized controlled trial.”Journal of Women’s Health Physical Therapy, 45(3), 101-107.
Pilates Studio DEP岡山店代表。脳卒中認定理学療法士/三学会合同呼吸療法認定士/理学療法士協会介護予防推進リーダーなど様々な資格を保有。岡山県内の超急性期病院で10年以上勤務し、脳神経・呼吸循環・整形外科など多くの疾患を経験。病気になる前の予防医療としてのピラティスに可能性を感じ、DEP岡山店をオープン。地域の方々の笑顔の未来を守り続けらえるようなサービスを日々提供している。